宇宙の戦士 ロバート・A・ハインライン

紹介より

恐るべき破壊力を秘めたパワードスーツを着用して、目的の惑星へと宇宙空間から降下、奇襲攻撃をかける機動歩兵。地球連邦軍に志願したジョニーが配属されたのは、この宇宙最強の部隊だった。肉体的にも精神的にも過酷な訓練や異星人との戦いの日々を通して、ジョニーは第一級の兵士へ成長していくが……。ミリタリーSFの原点ここに。映画・アニメ界にも多大な影響をもたらした、巨匠ハインラインヒューゴー賞受賞作。

 幼い頃、この映画化作品であるスターシップトゥルーパーズはお気に入りだったので、度々見ていた。後年映画版は戦争をグロテスクに描く反戦映画であり小説版とは全く違うと聞いていたが、あらすじでは殆ど同じである。

若き青年であるジョニーが軍に志願し、訓練とバグと戦いのなかで成長していくというジュブナイル的は一面は同じと言える。他方、この小説が他業界に与えた影響というのはパワードスーツという概念であるのに、映画版では泥臭い白兵戦(歩兵が生身で戦う)のだから、全く違うと言われるのも頷けた。

そして骨子である度々挟まれた歴史・道徳哲学の授業と市民の義務についての考えが興味深かった。

暴力が問題を解決するという考え方は普遍的だが、作品内で語られる市民道徳という考え方、「政治に参加できるのは個の利益よりも全体の利益を追求するために一度でも自分の身を投げだしたことがあるものだけ」そして現在の国民全てが何の義務も負わずに参政権を獲得していることについての批判は、発表当時のベトナム戦争前のアメリカでは大きな影響があったようだ。軍国主義的もしくはファシスト的な思想に感じられたが、日本では馴染みの薄い「市民」という概念と権利と義務についてのアメリカ人の考え方の一端かと思わされた。