幼年期の終わり アーサー・C・クラーク

紹介より

地球上空に、突如として現れた巨大な宇宙船。オーヴァーロード(最高君主)と呼ばれる異星人は姿を見せることなく人類を統治し、平和で理想的な社会をもたらした。彼らの真の目的とはなにか? 異星人との遭遇によって新たな道を歩み始める人類の姿を哲学的に描いた傑作SF。

言わずとしれたクラークの代表作の一つ。以前読んだ時は、冒頭部分は冷戦下で米ソがすわミサイル発射という一触即発の事態にオーヴァーロードがやってきたように記憶していたが、今回読んだ版ではロシア人宇宙飛行士が宇宙へ飛び立とうとする瞬間に彼らがやってきてそれを阻止するという変更がなされている。

解説では1989年米ソの対立が解消していくなかで時代に合わせた再調整として新訳版に改訂された旨が説明されている。

オーヴァーロードが悪魔的姿をしていること(何故その姿を悪魔的と感じ忌避感をもたらすのかという説明)、それに人間がある種飼育されていること、オーヴァーロードすらもその上の存在であるオーヴァーマインドの従っていることなどがSF的な思索に富んでいる。そしてSFとオカルトが同じ文脈内で語られていることも当時の状況が伺えて面白い。

一つだけ穿った見方をするならば、人類がオーヴァーロードの一部になるということは、人類が進化したのではなく、ただオーヴァーロードに取り込まれただけ、乱暴に言えば餌になったのではないだろうか。